2008年12月号 会員2欄掲載 以下6首 砺波湊・作
十二月 わが母、帝、神の子の一日おきに来る誕生日
似通った富士額もつ兄弟に姓なし コバルト、アトムにウラン
今までに暮らした町のそれぞれに「かどや」があって 今度は酒屋
ビル壁面緑化プロジェクト推進のために伸びゆく地被植物ら
壁面に蔓は伸びその蔓のなか昇り降りする水を思おゆ
ソフトウェア企業のビルは蔓に埋もれ宵にはいささか廃墟に見ゆる
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2008年11月号 会員2欄掲載 以下6首 砺波湊・作
陽炎に息をひそめた日の午(ひる)の空にそびえていた白い雲
夏の陽も汗も瞳に入り来るものみななべて痛みをくれる
飛行機雲を薄めゆく空 蝶二匹いれかわりながら遠ざかる空
どちらにしても少し遠いな水音か誰かがはしゃいでいる声がして
梨の実を歯と歯の間に潰すとき舌の上に土の味よみがえる
庭の隅いつでもカンナは立ち尽くす爛れたような花弁を晒し
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2008年10月号 会員2欄掲載 以下6首 砺波湊・作
かつて飼いし千羽の小鳥 制服の模様を千鳥格子と呼べば
持ち物のすべてに名前が書かれてた時代を通ってきたわたしたち
雨傘はネコ目イヌ科の亜種だろう屋根の下にて身を震わせる
オールナイト四本立てゾンビ特集をそっとサンダル脱いでから観る
幹のなかに眠る女を揺する指 船越桂は楠を彫る
モノクロの瞳またたき街をゆく森山大道という名の男
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2008年9月号ではリレー連載(?) 「卓上噴水」に
20首が掲載されたので月例作品はありませんでした。
2008年8月号では特集企画 「20代・30代競詠」に
8首と小文が掲載されたので月例作品はありませんでした。
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2008年7月号 会員2欄掲載 以下6首 砺波湊・作
・高架下 極彩色の落書きもありて明るむ街の底いは
・都立高のブレザーの色に変わりおり公衆電話のアボカドの色
・そっちが今まで無視してたでしょと言うごとく膜はりおえて冷めた牛乳
・深更に鮨を食みつつ母怒る「未亡人」なる漢字が嫌い
・本を閉じれば抱き合うふたり見開きの左右に載ったデカルト、ロック
・レンズの曇り二十一年とりしのちバールフ・デ・スピノザ儚くなりぬ
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