世の中ね、顔かお金かなのよ!

ブログタイトルはこんな(回文)ですが、恋愛や人生の指南はしません(できません)。砺波湊の短歌メインなブログです。

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東チーム

百万の雨受けとめて土道にレインコートが森色を増す(中村成志)

V.S.

西チーム

みどり色の一升瓶のうちがわがわずかに灯る冬の夜となる(黒崎聡美)



両チームの推薦文、勝敗は「続きを読む」をどうぞ。
(全文を読む前に、ご自身で感想や勝敗を考えておかれると面白いと思います!)






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東チーム

百万の雨受けとめて土道にレインコートが森色を増す (中村成志)


念人 : ユキノ進

土砂降りの雨の中、一本の舗装されていない森の道を男が歩いています。

昼間なのに辺りが暗くなるような厚い雲。森の緑は深く、雨を受けた泥の道は黒くぬかるんでいます。

晴れた日には鮮やかな緑に、伸びる道の乾いた土のコントラストが映えていたのですが、今は雨がすべてを塗り込めるように降り続けています。

そして男のレインコートも同じく雨の中でぐっしょりと濡れ、いまや森や水たまりに混じり溶けこんでしまいそうです。

この歌はこのようにもともとはそれぞれの色を持っていた森、道、レインコートが、雨の中で一つの色に混ざっていく様子を描いています。混じり合う色は道でも雨でももちろんレインコートでもなく、森の色として示されます。

「森色」とは聞きなれない言葉で作者の造語だと思われますが、読者の頭にその色はありありと再現されるでしょう。

雨の中を歩いている人はもちろん作者なのですが、歌の視点はずっと高みから見おろしているかのようです。その俯瞰の視線は神の視線です。

雨に打たれる人間を詠いながら、雨を降らせている神自身が詠っているかのような複雑な構造を持つ「百万の雨受けとめて土道にレインコートが森色を増す」を推薦します。
(ユキノ進)


中村成志(なかむら せいじ)

10年ほど前から短歌を始める。所属結社等無し。
blog http://blog.goo.ne.jp/0323_2006
twitterアカウント @nakam8

ユキノ進

ふたつの草野球チームに所属しています。短歌の結社には入っていません。


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西チーム

みどり色の一升瓶のうちがわがわずかに灯る冬の夜となる (黒崎聡美)


日本酒の一升瓶に茶色や緑色が多いのは、色つきガラスの方が安いこともあるけど、紫外線から中のお酒を守るという効果もあるからです。

その守られたうちがわにわずかに灯る、と言っているのは、緑に透けて残ったお酒が見えているからですね。直接的に沢山飲んだという表現をしなくても、その言葉から、もう残り少なく、かなり飲んでしまったことがわかります。

飲み屋さんでも注ぐときに瓶を見せてくれることはありますが、目の前に置かれていることから、きっともっとプライベートな場所なのでしょう。

日本酒の種類によるけれど、火入れされていないものは早目に飲んだほうがよいとされているし、一升瓶という量から、ひとりでなはく、大勢でもいいけれど静かな感じから、ふたりでじっくり飲んでいるんじゃないでしょうか。杯が進むほどに気がつけばもう夜になっている。そのくらい楽しい時間が過ぎたということですね。

その情景描写だけでもとても美しいのに、瓶の内側を自分の内面と置き換えれば、お酒と交わされた楽しい会話に、瓶の緑色のあたたかさと相手に守られているあたたかさが重なって、寒い冬なのに、身体も心もあたたまっているのだと思います。

あかりが灯って冬の夜になったように、もしかすると気がつけば相手への想いも一緒に灯ったのかも知れません。

そんな気持ちまで想像できるとてもすてきな短歌です。
(天国ななお)

黒崎聡美

ケータイ短歌等への投稿を経て、2009年「短歌人」入会。
blog「ゆびおり短歌」 http://blog.goo.ne.jp/imaitanka

天国ななお

Twitter Account @momomiyam
2004年の「枡野浩一のかんたん短歌blog」をきっかけに短歌を作り始める。2013年に同人誌「短歌男子」に参加。


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判者:砺波 湊

2回目の開催ではじめて役につきました。
まず、最初にひとこと。とても難しかったです!
こんな難しいことをみんなにやらせていたのか! と驚きました。
こっちのここもいいしー、でもこっちのこれはやっぱ光ってるしー、とウロウロしていると勝敗がつきません。
ここは、少ない予算で買い物をするときを思い出して、無情に徹しなくてはならないようです。
以下3点に絞って考えました。

1)歌の内容の伝わりやすさ、そして伝わってきたその芯の部分を好きかどうか。
2)鑑賞を妨げるような「引っ掛かり」がなるべくないこと。
3)歌の魅力をサポートしてくれている応援の文章であること。

では、まずは「百万の雨受けとめて土道にレインコートが森色を増す」(中村成志・作)から。

「引っ掛かり」は冒頭の「百万」。適当な数を使うのって、たとえば「百万本の薔薇の花」とか、口ずさむほうの歌なら良いと思うのですが、容赦なく降りかかってくる雨粒の描写が「百万」で本当にいいの?その言葉ならコタツに潜ってるわたしにも思いつくんですけど、と思ってしまいます。

ユキノさんは歌のダイナミズムを指摘されていました。
確かに、「百万の雨」→「土道」(上空から地上へ視点が移る)→「レインコート」→「森色」(道をゆく人からその人物を包む大きな空間へ意識が広がる)……面白いといえば面白いのですが、ちょっと落ち着かなく感じました。
一人きりで歩みを止めることなく前に進んでいく、というようなレインコート(を着た人)に集約して終えたほうがスッキリしたのではないかな、と思ってしまいます。

この歌の中では「森色」が一番の工夫だという感じがします。
ユキノさんのおっしゃるように、造語なんだろうけど納得度が高いです。覆い被さるような森の緑とも地面から跳ねてくる泥の色とも違う、だけど全部が交じり合ったような、色というより森の一部になる感覚なのかな、と。
「森色を増す」の「も」「ま」の音のモワッとした、湿度高そうな膨張する感じも造語を受け入れるのに一役買っているな、と思いました。
一役買う、といえば中村さんの真っ直ぐな詠いぶりに、端的で力強いユキノさんの文章も作品を盛り上げる効果を発揮していると思いました。


次に「みどり色の一升瓶のうちがわがわずかに灯る冬の夜となる」(黒崎聡美・作)について。

実は最初は、単純に光景がうまく思い浮かびませんでした。
着色された瓶の中に液体があると、液体を通して見たほうが光が強く見える、ということが理解できずにいました。日本酒を飲まないし、濃い緑や茶色をした白ワインの瓶くらいしか見たことがなかったんです。
酒屋さんで薄緑色の瓶に入った日本酒を見せていただき、短歌のとおりの映像を体験することができました。
瓶の向こう側の光を見ているはずなのに、瓶の内側、お酒そのものがぽぅっと灯っているような感じがしました。

引っかかるのは、「うち《がわがわず》かに」の「ガワガワズ」という濁音の畳み掛けてくる部分です。音も字面もあまりよくないし、しっとりした内容にそぐわないです。真ん中でガクガクッとしちゃうというか。
それから、「わずかに灯る」という部分は、ななおさんは「緑に透けて残ったお酒が見えている」と酒の量、つまり光って見える範囲がわずかだと読まれましたが、ぼんやりとした光とも取れると思います。
ちょっと不正確なのではないか、という不満もあります。うーん、どっちの意味と受け止めてもOKとしてもいいのかな、と少々悩みながら読みました。
さっきの「ガワガワズ」の指摘に戻りますが、「わずか」じゃなくて例えば「ほのか」としてくれたら光の強さに意味が絞れるんですよね。濁点もひとつ取れるし。
あ、他の方の作品を弄り回すのは、あんまりよろしくないですね。すみません。

ななおさんは「静かな感じから、ふたりでじっくり飲んでいる」と読み解かれました。
その静けさを感じる根拠はどこかな、と考えてみると、一升瓶をここまで見つめているということは、やはりこのお酒は一人占め(もしくは家族・友人などの親しい少人数で独占)しているのだろうなと感じました。

「紫外線から中のお酒を守るという効果」から「相手に守られているあたたかさ」が重なる、という読みは、深読みの部類なのかもしれないけれど、うなずけるものがあります。
さっきの、中村-ユキノ組もそうでしたが、こちらも落ち着いた調子の歌にほっこりさせる応援文がついていて、相乗効果を感じました。


さてさて、アウトドア派とインドア派、また孤高と長閑さという対照的な対決です。
(意図してこの組み合わせにしたわけじゃないんですよ。ほんとに。)
……悩む。でも、伝わってきた歌の内容、その芯の部分をどっちのほうがより好きかで決めます!

勝者【西】! 黒崎聡美-天国ななお組です!

東チームさんすみません(>_<)
ここでこんなことを明かすのはアレですが、実は、中村さんからは最初に短歌を三首お送りいただきまして、
山に挑む内容の連作になっておりました。迫力があって、知らない世界なのに感覚が伝わってきて、とても楽しく読みました。(主催者の役得です。)と、ここで付け加えさせていただきます。

難しかったー。今度は念者役をやりたいです。
(砺波 湊)

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