世の中ね、顔かお金かなのよ!

ブログタイトルはこんな(回文)ですが、恋愛や人生の指南はしません(できません)。砺波湊の短歌メインなブログです。

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東チーム

大名古屋ビルヂングのあの屋上でビールとおまへと一番星と (太田宣子)

V.S.

西チーム

葛の葉にカーブミラーは囲まれて 真下にゆけばとおくを映す (やすたけまり)



両チームの推薦文、勝敗は「続きを読む」をどうぞ。
(全文を読む前に、ご自身で感想や勝敗を考えておかれると面白いと思います!)






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東チーム

大名古屋ビルヂングのあの屋上でビールとおまへと一番星と (太田宣子)

念人 : 鈴木麦太朗

一読して大柄で清々しい歌だなあと感じました。作者は地上にいてビル屋上のビアガーデンを見上げているのでしょう。季節は夏、一番星が見える時間帯だから午後七時くらいでしょうか。ちょうど仕事帰りのころと思われます。歌からは《一番星が見える時間帯》と特定できるわけではありませんが自然とそのような状況を想い浮かべました。恋人と屋上のビアガーデンで一番星の下いっしょにビールを飲みたいなあという気持ちをダイナミックに訴えた歌と読みました。

少し細かく見てゆきましょう。まず注目すべきは下の句です。「ビール」「おまへ」「一番星」が格助詞「と」をしたがえて等価にならんでいます。「ビール」→「おまへ」→「一番星」という順に対象がどんどん大きくなり、同時に視点が近くからはるか遠くへ移っていくところは、何気ないけれど計算された修辞であると言えましょう。またこの三つの単語は「ビール」=「おまへ」=「一番星」ととらえることもできます。お酒が好きなひとにとってビールは恋人(おまへ)と言えるでしょうし、一番星は言わずもがな某ビールのあの☆を想像させてくれます。ビールを飲みたい!
おまへを飲みたい! 一番星を飲みたい! つまりは、兎にも角にもビールを飲みたい!
ということを強烈にアピールしている歌と読むこともできるのです。

戻って、初句二句にまたがる「大名古屋ビルヂング」はとてもよく効いていると感じます。Wikipedia等を読んで、このビルは数年前まで名古屋駅前に建っていて現在は建て替え中であること。屋上には「マイアミ」というビアガーデンがあって夏場はおおいに賑わっていたことを知りました。「ビルヂング」という独特の表記はノスタルジーをさそいます。また「大」は名古屋のひとたちの陽気で賑やかなイメージを彷彿とさせてくれます。そして何よりこのビルは実在していて実際に屋上ビアガーデンもあったということが歌のリアリティーを強力に支えています。

「大名古屋ビルヂング」についての余談です。その昔父から「はじめに名古屋ビルができて、対抗して大名古屋ビルができて、さらに対抗してオレンジ名古屋ビルができた」という都市伝説?
を聞いたことがあったので、これらのビルのことは昔から気になっていたのです。(補足:オレンジ=橙=大々)ネットで調べる限りこの三つのビルのうち「オレンジ名古屋ビル」は実在しないとみられるので、どうもこれはガセネタだったみたいですが……。

最後に、好きなこと、楽しいこと、というテーマでこの歌をつくった太田宣子さんはよほどお酒が好きなんだなあと感心するとともにおおいに共感を覚えたことを記しておきます。

太田宣子

太田宣子(おおたのぶこ)です。ツイッターは@aofukugooriです。
三重出身→赤福LOVE→赤福氷→商標登録に抵触?→青福氷。
この度はユキノ進さんにご紹介いただき参加させていただくこととなりました。
どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木麦太朗

鈴木麦太朗です。未来短歌会笹公人選歌欄にいます。どうぞよろしくお願いします。

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西チーム

葛の葉にカーブミラーは囲まれて 真下にゆけばとおくを映す (やすたけまり)

念人 : 魚住めぐむ

葛はマメ科のつる性の植物。秋の七草のひとつ。
大型のつる植物で成長も旺盛で野山を覆いときには枯らしてしまうとあるので、その葉はかなり生い茂ると想像できます。

そんな葛の葉に囲まれたカーブミラーは、緑のおばけのように見えるでしょう。

カーブミラーはカーブミラーとして存在しているというよりは、緑のなかに鏡が見えるような状態です。
緑の葉っぱが生い茂り、カーブミラーは半分(もしかしたらもっと少し)だけ覗いているのです。
そんな緑のおばけの真下まで行くと、本来のカーブミラーとしての鏡の部分が見えます。
そしてその鏡を覗き込むと、鏡に映った遠くの景色が見えてくるのです。

上の句で【カーブミラー】は「葛の葉に」「囲まれて」います。
ここで一字あけ。この一字あけは、読み手に『カーブミラーは葛の葉に囲まれて…、一体どうなっちゃったの?』と思わせる一呼吸になっています。
そして四句目「真下にゆけば」で【人】の登場です。
と思ったら、結句では「とおくを映」している【カーブミラー】へと戻ります。

【カーブミラー】 → 【人】 → 【カーブミラー】 この転換が歌をおもしろくしています。

『葛の葉に囲まれたカーブミラーが遠くを映していた』というだけの歌になってしまっていないのは、【人】を登場させることで歌全体に動きが出てくるからです。
歌のはじめやおわりでなく真ん中あたり(=四句目)に【人】が出てきていることも効果的です。
【人】の出てくる場所が真ん中あたりでなければ、 【カーブミラー】 → 【人】 または 【人】 → 【カーブミラー】 だけで終わってしまいます。

そしてその【人】の行動によって、はじめは遠かったカーブミラーに近づいたことがわかります。
そこに結句の「とおくを映す」を合わせると、 【遠】 → 【近】 → 【遠】 となり、動きだけでなく広がりも出ます。
歌が立体的に感じられる理由です。

緑のおばけになったカーブミラーをみつけたときのたのしさ、ワクワク。
そして近づいて?カーブミラーを覗くときのたのしさ、ドキドキ。
この歌にはそんな発見や好奇心といった少年(少女)っぽさが感じられます。
おとなになってもそんなワクワクドキドキをたのしいと感じているのです。

そこにテーマの「自分の好きなこと、楽しいこと」を感じ取ることができます。

覗いたカーブミラーに映る遠くには、ワクワクドキドキにいつも囲まれていた子どものころが映し出されているのかもしれません。

やすたけまり

未来短歌会 加藤治郎選歌欄所属。
歌集『ミドリツキノワ』(2011年 短歌研究社)
blog「すぎな野原をあるいてゆけば」http://blog.goo.ne.jp/sugina-musicland
twitter @sugina_01092
ネットプリント『月刊ミドリツキノワ』は、発行時に上記のブログ・ツイッターでお知らせしています。どうぞよろしく。

魚住めぐむ

「短歌人」」に所属しています。
よろしくお願いいたします。

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判者:白石瑞紀

最初にいただいた歌を読み、それから、念人の方の推薦文を読みました。

まず、やすたけまりさんの歌。平易な言葉で難しいところはありません。感じのいい歌で好みの歌です。
植物やカーブミラーという小道具にちょっとしたひとひねりがあるところ、やすたけさんらしいなぁと思いました。
念人の魚住さんが「そんな葛の葉に囲まれたカーブミラーは、緑のおばけのように見えるでしょう。」と
推薦文で書かれていますが、ネットで葉に覆われたカーブミラーの画像を見かけました。まさに「緑のおばけ」でした。
こんなのを散歩の途中なんかで発見したら、わくわくして、近くに行ってみますよね。そして、ミラーを覗いて見ますよね。
わたしが「ひとひねり」と感じた部分を、魚住さんが明確に言葉(&図解)してくださいました。
歌に表記されていない【人】による動きや広がりがとてもわかりやすかったです。
「おとなになってもそんなワクワクドキドキをたのしいと感じている」のはとてもすてきなことだなぁと思いますし、
そんな「おとな」でありたいなぁとも思います。

次に太田宣子さんの歌。こちらも平易な言葉で難しいところはありません。
作者名が伏せられていたら、男性の歌と思ったかもしれないくらい、大きいです。一首からかもし出される昭和の匂いがいいです。
でも、私、お酒を飲みませんので、残念ながら共感はありません。
それから下の句の並列は「部屋とYシャツとわたし」みたいな?と既視感があるように思いました。
そのように思った下の句を、念人の鈴木さんが推薦文で丁寧に読み解いてくださっていました。
ぜんぜん「部屋とYシャツとわたし」じゃないですね。ぜんぜん読めてなくてすみません。
「お酒が好きなひとにとってビールは恋人(おまへ)と言えるでしょうし、一番星は言わずもがな某ビールのあの☆を想像させてくれます。」
という一文に、はっとさせられました。好きなものの並列だけじゃなく、重なっていくのですね。
そういう見方をすれば、作者は本当にビールが好きなのですね!
また「大名古屋ビルヂング」のイメージもノスタルジックな雰囲気だけではなく、
そこに集う人たちまでも想像しうる、と言う点、なるほどと思いました。(余談も楽しく読みました)

いずれの歌もいい歌で、念人のお二方の思いのこもった推薦文もすばらしく、迷うところではありますが、
「好きなこと(もの)・楽しいこと」というテーマに対して、「びーーーーーーーーーる!」とシンプルな答えを
どーんと、しかし巧みに出してくださった太田宣子さんとその巧みさに気づかせてくださった鈴木麦太朗さんチームの勝ちとしたいと思います。
(白石瑞紀)

白石瑞紀

塔短歌会の白石瑞紀です。猫とチョコレートが好きです。
twitterアカウントは@mi_shir です。


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