世の中ね、顔かお金かなのよ!

ブログタイトルはこんな(回文)ですが、恋愛や人生の指南はしません(できません)。砺波湊の短歌メインなブログです。

千原こはぎさんによる企画・編集の「Re:短歌」に参加しました。
51組102名による「返歌」、計408首が詰まっています。
DLは→こちらへ。

わたくし砺波湊は、笛地静恵さんと「架空世界のBL相聞歌」(p.15)を作ってみたのですが、
その経緯と返歌の記録をしておきたいと思います。


――ある夏の日。
ツイッターを眺めていたら、お知り合いが「ネット上の企画で返歌をやってるところ♪」と楽しそうなツイートをしていました。

ふーん、返歌ねー…ちょっと羨ましいな…でも、友達いないしな…(この時点で誰からも誘われてないワケだし…)と思うわたし。
でも、ちょっと検索するくらい…これは皆の募集文を読んで「アハハ-」とかするだけだし…と、
「#(ハッシュタグ)返歌短歌集お相手募集」で検索してみました。
すると、とあるツイートが目に留まりました。

「61歳。男性。SM小説家。こんなわたくしでも、組んでいいという方は、いらっしゃいますでしょうか。」

なんか、すごいインパクトのあるツイートが見つかりましたけど…。

これが、返歌・相聞・しかもBL短歌に初挑戦するきっかけになったのです!

(全文です。 ↓ 長いです。)
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もう一度、募集文に目を通します。

bosyuu-fuechi

「笛地静恵(ふえちしずえ)と申します。
61歳。男性。SM小説家。こんなわたくしでも、組んでいいという方は、いらっしゃいますでしょうか。」


何だろう、この迫力。
「29歳。無職。実家住み。」とか「37歳。カノジョいない歴=年齢!労働関係法令違反で三度送検された会社に勤めてます☆」などと明かさずに他人とやり取りできるのがインターネットなのに、かえってすごい。
(まぁ後から「エ-ン!SM小説家の61歳男性と相聞歌をやり取りしてしまったなんて!!」とか
騒ぎ出す人が出てくる可能性を秘めているのもインターネットなのですが…。)


61歳の男性であることは、何らマイナスでないし、SM小説を書いて活計をたてるなんて中々すごいし、
(SM小説を興味のない人に無理に読ませたら怪しからんですが)
職業をキチンと書かれるなんて誇りをお持ちなのだろうし、「男女その他問題にしません。」という締め括りも毅然としています。
BL短歌は書いたことないけど、小説とかマンガ作品なら嗜んでおり、友達との萌えトークにも参加した実績があります。
まぁ何とかなるだろうと思い、立候補してみました。

henshin-10733710

「詳しくない」「やったことない」とか否定的なことの多い自己紹介ですね…。
このblogのURLを貼り、自作を読んでほしい旨も書いておいたところ、
とりあえず短歌の交換をしてみましょう、というお返事をいただけました。(わーい!)

そして、お返事の中にはこんな言葉がありました。
「何かご希望の設定はありますか?」「合わせます」
↑ これが後々、大変に心強い言葉となるのです。

しかし、そのときのわたしが考えたのは
「えっ、もしかして【なりきり】をやらなきゃなの…?(驚愕」でした。
(【なりきり】というのは、好きな登場人物に全力でなりきる「ごっこ遊び」…のハイパー版、です。
なりきりチャット、ツイッターでもなりきりアカウントなどがありますが、なりきりさん同士の会話は、冷静な人から見ると強烈にイタイのでご注意下さい。)


「僕は○山△斗、15歳!」みたいなのを考えなきゃいけないのかな…
あっ待って待って、架空世界のことも考えてなかった…SF? ファンタジー? しかもBL?! 二人分の設定が要るの?!

それに何より相聞歌を書いた経験がほぼありません。
それなのに、雑談の中で
「 塚本邦雄さんの作品は素敵だと思います。BLっぽいものですと、
  ・禁猟のふれが解かれし鈍色の野に眸(まみ)ふせる少年と蛾と
  ・ひる眠る水夫のために少年がそのまくらべにかざる花合歓 『水葬物語』

…などと書いていたのでした。身の程知らずにも程があります。

「ギタリストはCharさんが好きかな」とか言っておいて、コード二つくらいしか出来ない的なヤツです。
(名刺に印刷してある自作短歌は「美女に生まれた代償としてポスターの米倉涼子の鼻には画鋲 (砺波 湊)」だし。)

  ・崩されて頬張られ溶けて吸われゆく削氷(けずりひ)なればあなたの舌に
  ・図鑑伏せ交わすくちづけ表紙には箔押しの金の水面のひかり

…とりあえず、こんなのをお送りしました。
相聞かもしれないけど、BL成分は薄いです(焦)。
一首めは、かき氷食べたくて書きました。架空世界の欠片も見えません(涙)。

「禁猟のふれが~の歌、良いですね」 と笛地さんがおっしゃっていたので、
「猟」→「獣」→そうだ、ケモナーだ!と、ようやく思いつきました。半獣のイメージです。
  ・薄き背を抱きつつ聴く足枷の鎖の奏づ鋭き旋律を
  ・鉄
(くろがね)の匂いは雄に似た匂い檻の向こうを月が漂う

「歌は多めに送ります♪」 と言ってたのに、一日半で「何か…アドバイスください…」に変わっていました。
自分のことじゃないから幾らでも自由に歌ができるのかと妄想していました。む、難しかった…!

さて。
皆さん、ご記憶でしょうか。返歌をやってみましょうか、と決まったときの笛地さんの言葉を。
「何かご希望の設定はありますか?」「合わせます」
 ↑ こ れ で す 。


翌日、お返事が届き、びっくりしました。

狼のいるギムナジウム ―BL相聞歌 》

  湖水にはギムナジウムと氷島(ひょうとう)ときみをいざない秘密の基地へ (笛地)
    薄き背を抱き寄せて聴く足枷の鎖の奏づ鋭き旋律を (砺波)
  狼の血をひくぼくは嘘つきさ二枚の舌の巻きつつ甘し
    図鑑伏せ交わすくちづけ表紙には箔押しの金の水面のひかり
  クリスマスの男子寮にはふたりきりケーキへささる蜜の蝋燭
    (くろがね)の匂いは雄に似た匂い檻の向こうを月が漂う
  剛毛の汗に濡れたる夜のけもの金の蔓草からむ樅の木
    崩されて頬張られ溶けて吸われゆく熱に焦がれた削氷(けずりひ)として

おおお、ギムナジウムになってる!
図鑑、から学校が想起されたのかな…檻や鎖からが導かれて…
わたしがかき氷食べたかっただけなのに「氷島」が出現しています…
(「氷島」は氷でできた浮島、地図にない幻の島、の意味です。)
きっと二人は秘密基地を空想の中で「氷島」に見立てているのでしょう。

それから、 二人ともクリスマスに家に帰れない境遇なのだという設定が巧いなぁ、と。
厨ニ病っぽくて仲良しすぎて浮いているだけかと思っていたら、
実は、寄る辺ない者どうしが身を寄せ合っていたんだ、と。
「ケーキへささる蜜の蝋燭」というのも甘ったるくどろどろ混じりあう
だけでなく、すぐに不要になってしまうことへの苦味も感じられます。

そして、「削氷」の歌を最後に持ってきたことで、クリスマス休暇後に
生徒が一人消えてしまったりするのではないか…
自称「狼とのハーフ(痛」とか嘯いていた少年は、ひょっとして「本物」なのでは……。

自分でも連作を作るにあたって、縁語を考えるとか、イメージを連鎖させるとか、平仄を合わせるとかはやってはいますが…
幾つか、キーになる語句を足してもらったりしただけで、これだけ「物語」が立ち上がるんだぁ、と。
最初にわたしが五月雨式にお送りした歌と見比べてください…全然印象が違います…。
うわーー小説家ってすげーーー(小並感)

「削氷」だけ季節が夏なので、相談の上、手直しをして確認いただいたり、
(修正後のかたちが「熱に焦がれた削氷」です)
わたしから見て語順が変だと感じた歌について推敲をお願いしたりして、完成。

笛地さんの手腕に唸っていたのも事実ですが、何より、リアルタイムで一首ずつ送信される瞬間にPCを開いていたので、
朝早くから!BL短歌が!萌えが!届くんですよ!! 奇声を上げながら百面相してました!! なんて贅沢!!

……というわけで、とても楽しく参加いたしました。ありがとうございました!
企画して下さった千原さん、返歌相手を募集されていた笛地さんに感謝です m(_ _)m

(「Re:短歌」のちょっとした鑑賞を読んでみようかな、という方は→こちら。)

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